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「人あってこその、組織」 ~中国古典兵書「三略」より~

今回は、中国の古典兵書「三略」の一節から、組織マネジメント・ピープルマネジメントのキモについて考えてみたいと思います。

この「三略」は、「孫子」や「呉子」と並ぶ「武経七書」の一書として1000年以上前から多くのリーダーに読まれてきました。漢の高祖・劉邦の軍師として漢の創業を実現した張良が、黄石公という仙人からこの「三略」を授かり奥義を極めたという有名なエピソードがあります。また、日本では北条早雲がこの書から大きく影響を受けたことも知られています。

さて、この「三略」の内容、兵書とはいえ戦争の戦略・戦術論というよりは、いかにひと・組織(1000年の昔だと国や軍)を動かすか?その要諦は?という点に焦点があります。それは、最初の一節から明確になっているので早速見てみましょう。(文章は一部平易な漢字・区切りに直しています。解釈は眞鍋呉夫氏の訳をもとに私なりに解釈しています。)

「三略」~上略の1~

『それ主将の法は、つとめて英雄の心を獲り、有功を賞禄し、志を衆に通ず。
ゆえに、衆と好みを同じうすれば、成らざる無く、衆と憎みを同じうすれば、傾かざる無し。
国を治め、家を安んずるは、人を得ればなり。国を滅ぼし家を破るは、人を失えばなり。
含気のたぐい、ことごとくその志を得んことを願う。』

これが一節目。最初っからど真ん中に「人」を置いていますね(笑)
平たく解釈すると、

「組織を率いるリーダーにとっての組織を発展させる原理原則は、
組織のメンバーとして「あるべき姿」を体現してくれているロールモデルとなるようなメンバーたちと関係の質を高め、
そんなメンバーたちの成果や功績を他のメンバーにも伝わるように称え、報酬を与えることによって、
リーダーが組織として大切にしているポイントや望む姿を、他のメンバーに伝播させていくことだ。
リーダーが多くのメンバーが望み・願うことをよく理解し、気持ちや共感が一致する状態であれば組織として望むことは必ず実現し、リーダーがメンバーの苦しみや悔しさをよく理解し、共にその苦しみ・悔しさに向き合っていればリーダーは必ずメンバーに信頼される。

すなわち、信頼・安心といったメンバーとの関係性が良好であれば(国や家といった)組織は安定・発展し、関係性が損なわれると組織はバラバラになって滅びてしまう。
人というのは、どんな人でも心の中にそれぞれの様々な夢や願いを持っていて、その願いが満たされることを望んでいるものなのだ。」

といった内容です。 北条早雲はこの一節を読んだだけで、組織を発展させる極意を掴んだそうです(笑)

さて、この一節には大切な「鍵」が2つあります。
一つは、どんなメンバーにも願いや想いがあることに向き合い、その願いや想いを引き出し、願いや想いの実現にリーダーが気持ちと支援を注ぐことで、信頼関係を築くこと。
もう一つは、個々人の願いを超えて「組織の願い・想いを体現している人」の評価のポイントを組織全体に表出することで、「組織としてのベクトル」を与えること。

この2つの「鍵」を実践できれば組織は発展していくということですが、マネージャー・リーダーだって人間。なかなか難しいことだということは私自身の体験からも良くわかります。1000年の昔以上に、個々人の願いが多様化していたり限られた時間の中で大量に「やらねばならないこと」が流れ込んでくる現在ではなおさら難易度が上がっていると感じます。

とはいえ、この2つの「鍵」をより効果的に実践するために、リーダーとして磨く必要がある視座・視野・視点とスキルは何で、どのようにすれば体得の機会となるか?そのあたりを「ひとマネスキルトレーニング」には詰め込んであります。

「三略」が最初に提示した組織発展の要諦。それに真正面から取り組んでみたい経営者・マネージャーのみなさんはぜひ「ひとマネ」に参加してみてください。