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「未来は過去からやってくる」

「ひとマネ」では、部下・メンバーの主体的行動を引き出すことに焦点を当てて、その方法論とスキルをトレーニングします。
その詳細は、ぜひコースに参加頂くことで体得して頂きたいのですが、今回のブログではコースで体得する方法論とスキルの背景にある「人間の行動」について。

人の「行動」とその他の多くの生物の「行動」の大きな違いはなんでしょうか?

多くの生物は、現状に「反応・対応」することが行動の中心を占めます。
生物の長い歴史の中で、常に「行動の焦点」は「いかに生き残るか?」にあります。
「生き残る」ために生物は、外部からの危険を回避すべく、「今起きていることに瞬時に反応・対応する」ことを行動の中心に据えてきました。
ところが、より環境的に不安定・変化の激しい環境でも生き残るためには、「今に反応」するだけでなく、「未来の変化に対応する」必要性が生まれます。
より幅広い環境に適応できる生物であること、それが「爬虫類」と「哺乳類」の違い・進化を生みます。

そして、哺乳類と爬虫類の生物学的な大きな違いは、「大脳新皮質」があるかないかに表れます。この「大脳新皮質」を獲得することで、哺乳類は「多くの記憶を蓄積して、今に即応する自動的・反応的な行動を抑え込み、より複雑な意思決定・行動を選択する」ことができるようになりました。だから哺乳類は「より高度な学習」≒「未来予測行動」ができるのです。その最も高度に発達した生物が人間です。

では、「未来を予測・想像する」とはどういうことなのか?
それは、「多くの過去の記憶」と「現状インプットされる情報」を統合することで生まれます。つまり、過去の記憶を蓄積かつ再現(思いだす)することができなければ、未来の「像」は生まれないのです。そして、この「過去の記憶」には、「過去の事実情報」だけでなく、その時の「体感覚情報」や「情動・感情情報」も含まれることが重要です。
これら「体感覚」や「情動・感情」が「行動」を生み出すエネルギーとなるからです。

よく、「ありありと思いだす」と言いますよね?
「ありありと」思いだすと、記憶が映像となり情動や感情が揺さぶられ「うずき」のような感覚が生まれます。
過去の記憶を「ありありと」思いだせれば、そこから未来の想像も「ありありと」描ける。
それが「未来を想定した主体的行動」の原動力となります。

実は、最近の脳科学研究で、「過去をありありと想い出す」時と「未来をありありと想像する」時に活性化する脳部位が「同じ部位」であることが分かってきました。
背外側前頭前皮質という部位です。

つまり、「未来は過去からやってくる」。

さて、「未来をありありと想像する」力が「過去をありありと想い出す」力と結びついているのであれば、未来を想像する力を養うために重要なのは「過去をありありと想い出す」機会の多さです。ちなみに、この「過去をありありと想い出して、自分の選択や可能性を探求すること」を「内省」と言います。ところが、現在の仕事環境において、もっと言えば幼少期から青年期の成長過程においても、「どれだけ、経験・体験をありありと振り返る」ことができているでしょうか?

もう一つ加えると、実は、脳は「自分の内部・過去を探求するのが苦手」です。
それは、生物がもともと「外部からの刺激に反応する」ために各種器官を発達させてきたからであり、大脳新皮質を発達させた今でも、その内部にはやはり「古くからある脳」がデーンと居座っているからです。目も鼻も口も耳も、すべて「外」を向いています。
結果、意識も「外を向く」のが自然なのです。

だから、「内省」するためには「外から問いかけが来ること」が有効なのです。
これが、1on1ミーティングやコーチングが重要であることの意味です。

私が新人時代を過ごしたリクルートでは、「レボ」という名の振り返りに、毎日先輩がつき合ってくれました。一日の仕事の終わりには必ず先輩が「今日の話を聴いて」多くの「質問」を(場合によっては「詰め」になることもある(笑))してくれました。
「で、お前はどうしたいの?」は定番の言葉として良く知られていますが、「過去を振り返った上で、自分の感情・意志と未来を想像する」機会と問いがあることで、「未来をありありと想像し、主体的に行動を選択する」エネルギーが湧いてくるのです。

みなさんの組織では、そんな機会と問うスキルを、
チームを率いるマネージャーが創り、磨いていますか?

時間の制約がより強くなった昨今の事業環境では、より意図的に・より効果的に「内省」の機会を創ることができなければ、「振り返り・内省」をしないまま、未来を想像・創造せず、現状に反応し続ける人ばかりが増えてしまいますよ。