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連帯感を高めるために必要な「スキル」の勘違いとは?

2019年のラグビーW杯。日本代表チームの初のベスト8進出に日本中が湧きました。
そして、彼らの活躍とともに「One Team(ワンチーム)」という彼らのビジョンワードが流行し、流行語大賞にもノミネートされました。

「One Team」には、
「一つの目的・目標に対して、メンバー全員が連帯して向かっていくチーム」といったイメージが湧きます。そのイメージを象徴的にビジュアル化・体感化しているのが、試合に入る際の姿。キャプテンのリーチ・マイケルを先頭に、全員が仲間の肩に手を置いて繋がって歩む姿から「One Team」を感じた方も多いのではないでしょうか?

一方で、多くのビジネスパーソンがこの「One Team」に感銘を受けたのは、自分たちのチーム・組織を見た時に、
「みんなのイメージしている目的・目標がバラバラ」
「ていうか、目的・目標が不鮮明?」
「あまりコミュニケーションが取れずに、連帯感が希薄」
といったことを、無意識にも感じ取ったからかもしれません。

「One Team」であることを願っているのに、必ずしも現状はそうじゃないからこそ、
改めてそれを体現した姿を見た時に、感情が刺激されたように思います。

さて、今回は「一つの目的・目標に対して、メンバー全員が連帯して向かっていくチーム」のうち、「連帯感を生む」に目を向けてみたいと思います。

「連帯感を生む」上で、基本となるのが「個」と「個」の繋がり。
繋がりを感じる元となる感覚は、「自分は相手に受け容れられている」と感じる「受容感」です。チームの個々人が「受容感」を感じられると、より踏み込んだコミュニケーションと共通体験が生まれ、それが共通の目的に向かっていくプロセスで「連帯感」が育っていくのです。

2013年に、文教大学人間科学部心理学科の城先生がビジネスパーソンにとって示唆の多い研究を発表されています。
この研究で重要な示唆は、2点。
自己開示度と被受容感の相関と
自己開示度と被開示スキルとの相関です。

「被受容感」とは、「相手に受け容れられていると感じる」こと。
この研究によると、自己開示度の内容・程度と被受容感に「正の相関」が確認できたとのこと。つまり、「自分のことをより深く話せるほど、自分は相手に受け容れられていると感じやすい」ということです。
直感的に、誰もが「そりゃそうだよね!」と思われるのではないでしょうか?

ところが、あなたの組織・チームにおいて「メンバー同士がお互いのことを深く知り合う、話しをする」時間を意図的にデザインしているか?と問われるといかがでしょうか?

「業務が忙しくて、中々時間がとれない」といった声を私も多くのマネージャーから聴きます。というか、私もそうだった時期があります。

経営幹部も含めて、この現実を「見ないふり」して、
「もっとみんなコミュニケーションを取ろう!」といった掛け声「だけ」が横行していると、メンバーの心の中に「そんなヒマ、一体どこにあんのよ?」といった反発や徒労感だけが湧くことになりかねません。実際、そんな職場多くないですか?

さらに、いざ話そう!と時間をとったとして、その場でマネージャーの期待するような話や活気あるコミュニケーションが起きない、なんてこともよく見聞きします。
そんな時、セットになって出てくる言葉が「コミュニケーション力が低い」。

「コミュニケーション力」って、かなりざっくりした言葉ですよね?
この言葉からイメージされるのは、多くの場合、「話す力・伝える力」。
なので、この力にまつわるスキル研修が多く存在しますよね。

もちろん、大切なスキルではあるのですが、それでコミュニケーションが活性化するか?というとそうじゃない。ということを、城先生の研究は示しています。

「自己開示」にとって重要な相関を示すのは「被開示スキル」すなわち、「聴く力」なのです。聴き手の聴き方、問いの投げ方によって相手の自己開示度は変わるのです。

人間は多かれ少なかれ、無意識に周囲が受け容れてくれるか?敵にならないか?を測って生きています。だから、その人が自らを中々開示しないのは、その人の伝えるスキルに問題があるというよりも、聴き手の聴き方に問題があることが多いのです。

「時間をデザインし」「聴き方を磨き上げる」。
それが、チーム内の「受容感」、さらには連帯感に直結する「スキル」なのです。
だから、ひとマネでは、ここに焦点を当てて体感・体得することを目指すのです。