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「ハラスメント」を組織から無くすためには?

最近また職場でのパワハラにより自殺された方が発生するという痛ましい事件が起こりました。2015年の電通事件でも過労に加えて数々のハラスメントがあったことが指摘されています。社会的に大きな問題となったこともあり、ハラスメント防止のための研修の相談も増えました。多くの研修は、マネジメント層に対し「ハラスメントに関する知識」「関連法規の知識」「ハラスメントを目撃した時の対処法」「ハラスメントを起こさないための社内ルール」といった知識やルールのインプットが中心。つまりハラスメントの問題を、「当事者になり得るマネージャー」が「知らない」から「起こる」こと、と捉えた対策が中心になっているのです。もちろん対策として必要なことだと思います。でも、やっぱり日々ハラスメントが起きている。これは一体どういうことか?
そろそろもう一段踏み込んで考えてみることが必要なのではないでしょうか?

『 そもそも多くの組織は、「ハラスメント」が起こる構造を内在している 』

どういうことか?
企業は、社会に価値を提供することを目的として個人が集う集団(関係性システム)です。そして提供価値が競合する競争相手よりも優位な価値提供のオペレーションを継続しなければ生き残れない存在です。
ですから、そもそも「より良い結果の質」を追求することが暗黙に合意された関係性システムなのです。そして、「結果の質」を変えようと思ったら「行動の質」を変えるしかない。

いかに構成メンバーの行動を変容させ続けるか?が、企業という関係性システムが生き残るための中心テーマであり、ある種の「正義」になってしまう要素です。

そして、行動変容を効果的に促し続けるために関係性システムの中では必ず「ランク(地位や権力・権限など)」と「ロール(役割)」が生まれます。
さらには、より効果的に行動変容を促すための「刺激」や「圧力」として様々な制度・仕組みを生み出し、それらは必ず「ランク」や「ロール」と紐づいて行動変容圧力を強化する方向に働くように知恵を絞ります。

企業という関係性システムの成長発展が、所属する一人一人の成長や幸福につながることを念頭に置くと、上記のようなことは決して悪いことではなくむしろ健全に磨き続けるべきことだと思います。

しかし、「副作用が起こりやすい」ということも所属メンバー全員が自覚しておくことが重要です。

どんな副作用か?

それは、「ランク」や「ロール」が、対象となる「人」と同一化して認識されてしまいやすいということ。
そして、「ランク」や「ロール」の前にそもそも存在している各々の「人格」が無意識に無視されてしまいやすいということ。

それは日常のこんなコミュニケーションに表れます。

「部長なんだから、●●してよ」「営業なんだから、●●するのが当然でしょ」
「新人なんだから~」「女性なんだから~」などなど。

「●●役員」「▲▲課長」といった呼び方にも表れますよね。

「部長」である前に、個性を持ったひとりの「人」。
「営業」である前に、個性を持ったひとりの「人」。

ひとりの「人」だから、それぞれに様々な情動も感情も湧くし、
ひとりの「人」だから、職場以外のコミュニティで様々な別のロールも果たしている。

でも、企業という関係性システムでは、そのそもそもの成り立ちから「この組織に所属している以上は、ここでのロール以外のことは自己責任で処理してこの場に臨むべき」といったビリーフ(思い込み・信念)が生まれやすく、またそれがある種の正しさもまといやすいところがクセモノ。
そして、ランクやロールと自・他を同一化してしまう認識と、そもそもの「人」としてのそれぞれの「違い」への無自覚が重なって「意図せざるハラスメント」「良かれと思ったハラスメント」が起こるのです。している方からすると一面の正しさが多かれ少なかれあるからやっかいなのです。

さて、このそもそも企業という関係性システムは「ハラスメントが起こる構造を内在している」、という認識に立って、みんなで「ハラスメントの起きない組織」を創っていこう!としたときに、根本的に必要なことは何か?

それは「ランク・ロールを脇に置きつつ、自他ともにありのままに関わる」時間を創ること。

簡単なようで難しいことです。
なぜなら、一見仕事において無駄な時間に見えるから。
なぜなら、そもそも人は他者にありのままをさらけ出すことに不安を感じるものだから。
なぜなら、具体的な要解決事項の方が優先順位が高いように思えるから。

しかし、グーグルが明らかにしたように「チームの効果性を高める」重要な因子は、一番が「心理的安全性」であり二番が「相互信頼」です。
つまり、「ハラスメントの起きない組織」を創ることと、「チームの効果性を高める」ことは、本来的に取り組むべきことが同じなのです。

「ハラスメントを無くそう!」という目的で活動を始めると「●●の撲滅」みたいなネガティブアプローチになりがちですが、「チームの効果性を高めよう!」という目的で活動を始めるなら「心理的安全性を高める・相互信頼を築く時間、方法を考えよう!」といったポジティブなアプローチになります。結果として、本質的にハラスメントが起きない職場になるのです。

昨今、1on1ミーティングの効用が広まり、多くの企業が取り組み始めていますが、その本質的な目的は上記にあります。
ただ、多くの企業でうまくいっていないのも事実。
なぜか?

それは、実際に1on1ミーティングを実施する人が上記のような目的を強く握っていないことに加えて、上記の「なぜなら~」に列挙した環境要因があるからです。
しかも、時間は限られています。

マネージャーが以上で述べたような時間の重要性と有用性を体感しないことには続かない。
マネージャーがそんな1on1を「やれる!」と思えるスキルが具体的にないとやり始められない。
マネージャーが短時間でメンバーと自分の「違い」を自覚できるツールがないと、恐る恐るの取り組みになってしまう。

そんな、マネージャーが一歩を踏み出すために必要な視点・スキル・ツール・体感をまるごと詰め込んだのが「ひとマネスキルトレーニング」です。

先日、修了生からこんなメッセージが届きました。
ひとマネに参加されたマネージャーの多くからこんな声を頂けるのがなにより嬉しいです。
こんなマネージャーの下では、きっとハラスメントとは無縁のチームが育つと信じています。

「流行風邪が物騒ですが、お変わりありませんでしょうか?私はすこぶる元気であります!ひとマネを修了してから、部下との関わり方が変わりました。
部下を知ることで信じることができ、仕事を任せられるようになったのです。
仕事前にチェックインをはじめると、今までにないほど部内は前向きな空気となり、その結果、「私にしかできない仕事」は激減し、私は自分自身のキャリアを考えるようになりました。なんとこの●月からコーポレートで働くチャンスを頂きました。
ひとマネが私のキャリアをステップアップさせるきっかけをくれたと感謝しています。本当にありがとうございました。」