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ひとマネで「生産性が上がる」②

前回のブログでは、ひとマネで「業務生産性が上がった!」マネージャーのケースを紹介しました。
その背景にある、グッドサイクルシステムは、以下の通りでした。

①トレーニングの名目で、関係の質・思考の質の向上に焦点を当てた「メンバー主体の重要な時間」を確保することを、先に「確定させた」。
②その時間を、メンバー・マネージャー双方にとって「意味のある重要な時間」と体感できるように、マネージャーがトレーニングしたひとマネスキルを実践した。
③回を重ねるごとに、メンバー・マネージャーが「この時間は、意味のある重要な時間だ」と体感した。
④「重要な時間」を死守するために、メンバー・マネージャー双方が「他の業務を速く終わらせる」工夫・努力を自然に行った
⑤気が付くと、メンバー・マネージャー双方の「業務生産性が上がっていた」

さて、多くの会社で「働き方改革」の掛け声のもと、業務生産性を向上させる取り組みが始まっています。
しかし、同時に「組織の疲弊感」が高まっているケースも多く見受けられます。

なぜでしょうか?多くの会社で、以下のようなサイクルが起こっていませんか?

①「働き方改革」の号令のもと、残業時間の短縮・有給休暇の取得がまず「確定される」
②現状の業務を、削った残りの時間の中で遂行する「やり方」は個々人に委ねられる
③「結果の質」につながる「行動」の見直しにも「時間がかかる」ので、個々人の単位では、とりあえず「行動の時間」優先が起こり「関係の質・思考の質を高める、コミュニケーションの時間」はまず最初に削られる。
④気が付くと、個々人が孤軍奮闘しており、お互いに「孤立」。
互いの現状や認識・想いを知る機会がなくなる。
⑤コミュニケーションが発生する瞬間は、「問題発生・問題解決」の瞬間に集中する。
互いの事情や認識を知らない中で、対立的コミュニケーションが発生しやすくなる。
⑥「問題」が生じている時は、大抵「緊急」。対処行動に時間を投入せざるを得ない。
結果、さらに「関係の質・思考の質を高める、コミュニケーションの時間」は消えていく。。。

こんなサイクルが回っていて、疲弊しない訳がない気がしませんか?

では、上記のようなサイクルにハマらず、長期的に「業務生産性の改善」が起こる取り組み方はどうすれば良いか?
冒頭のグッドサイクルを踏まえてまとめると、以下のようになります。
(具体的な曜日や数字は、あくまで例です)

①「働き方改革」の号令のもと、残業時間の短縮・有給休暇の取得がまず「確定される」
②組織全体で業務改革に取り組むことを決め、必要に応じて「投資」判断することを宣言する。
③組織の長が、組織全体として「現状の業務は月曜~木曜の4日でやる」「金曜の1日は、関係・思考の質の向上および業務スピードを改善するための方法検討の時間に充てる」ことを決める。
④組織の長は、「金曜の時間を意味のあるものとして充実させる」ための場の設計・準備・スキル獲得に集中する。
⑤組織の長は、「金曜の時間」に笑いが溢れる状態を作り、「金曜の時間」に生まれた組織としての改善策を投資判断・実行支援する。
⑥「金曜の時間が、重要で意味のある時間」「そこで決めたことが実行される」「結果、全体が楽になることにつながる」体験が組織全体に生まれる。
⑦個々のメンバーが「月曜~木曜」の中で個々に業務スピードを上げる努力が生まれる。

いかがでしょうか?
上記の曜日や数字の設定だと、全体の20%の時間を組織全体での「関係・思考の質向上」「業務改善ナレッジ・トレーニング等」に充てることになります。
中々ハードですよね?特に、「最初に時間の使い方を意思決定する」のが覚悟がいります。

しかし、私自身リクルートでマネジメントをしていた時に何度も上記手順を経験してきました。ある種大変さをみんなで楽しみながら劇的に業務生産性が上がります。(カーセンサー事業のV字回復の背景のひとつとなりました。)

もちろん、最初は大変ですし、何よりマネジメント陣の努力が非常に求められます。
でも、結果が出てメンバーの表情がイキイキしてくると「疲弊感」は癒されていくのです。
メンバー・マネジャーが「孤立」していなければ、互いに癒しあえるのです。

その頃、わたしの上司はよく言っていました。 「メンバーはお客様の現場で汗をかくんだから、我々マネジメント陣が頭に汗をかかなくてどうするんだ?」

この意思決定は組織のより上位レイヤーで為されるほど、全体インパクトは大きくなります。

社長~部長陣で、「ひとマネ」に参加されたあるベンチャー企業は、ひとマネを通じて社長自身が関係の質・時間の使い方の重要性に腹落ちされ、その場で「業務時間の20%を関係・思考の質向上、全体での改善活動に投入しよう!」と意思決定されました。
そして、関係・思考の質に焦点を当てた1on1ミーティングを実行するとともに、役員・部長それぞれが様々な担当活動のオーナーとなることを決めて様々な活動を展開されました。
結果、半年経つとメンバー自身が「関係の質は大切だ!」「うちのチームは全員野球だ!」なんて言いながら主体的に行動し、飛躍的に業績が上がることに繋がっていったそうです。

どんな個々の努力も、意味あるものと感じられなければ、そして波及的に全体が良くなっていくサイクル・メカニズムに乗っていなければ「徒労」「孤立」が生まれ、それが疲弊感・自己効力感の低下につながっていきます。

そんな状態を防ぐ契機として、ピープルマネジメントの視野・視界とスキルをトレーニングしていくのが「ひとマネ」なのです。