昨今、人材採用の現場では「リファラル採用」が広がってきていますね。
採用市場の競争が厳しい中、採用コストが低減できる・紹介者との関係性から定着率が高くなるといったメリットが注目されますが、最も期待できるのは「自社の社員の紹介だから、自社にマッチした人材と出会いやすい」という点ではないでしょうか?
ちなみに、採用コストが低減できるというのは一見そうなのですが、実際は「社員が友人に自社を紹介したい」と思えるような魅力的な会社で在り続ける必要がある訳で、そのための継続的な組織風土・制度作りに対する投資(インナーブランディング投資)を想定すると一概にはそう言えないかもしれません。
なのでコストメリットよりも、「より自社で活躍可能性の高い人材を採用する」という観点からリファラル採用を推進するのが本筋のように思います。
さて、リファラル採用に限らず、「自社にマッチする、活躍可能性の高い人材」を採用したいというのはすべての採用に共通するテーマだと思いますが、
その際に「類は友を呼ぶ」という原理原則をうまく採用戦術に活用する視点を考えてみたいと思います。
私たちは、精神医学ベースのパーソナリティ診断「PSA」を活用して、ピープルマネジメントや組織開発の支援をしています。
この「PSA」では、ひとりひとりの「ある程度先天的に規定される持ち味(情動のパターン)」を明らかにすることができます。
「情動のパターン」は、個人個人が持つ「自動的・本能的」な反応の傾向で、大きくは8つのタイプに分かれます。
重要なのは、この8タイプそれぞれに動物的な「快・不快」の衝動が異なるということ。
つまり、同じ現実に直面していてもそれを「快」と感じるか、「不快」と感じるかにタイプによってかなりの違いが出るわけです。
逆に、同じタイプの「情動のパターン」を持った人同士は、「快・不快」の感覚が似通っていて、感覚が通じやすいということ。
ここで、「類は友を呼ぶ」の科学的背景が見えてきます。
実は、様々な組織でPSAの受検結果を検証した結果、
「面接担当者は、自分に似た情動パターンの応募者を採用しがち」
「応募者は、自分と似た情動パターンの面接担当に口説かれた場合に動機付けされやすい」
ことが見えてきています。まさに、「類は友を呼ぶ」です。
あるIT企業でこんなことがありました。
その企業は、創業50年を迎える業界としては老舗の会社。
年次・階層別にPSAの結果を分析してみると、階層別の8タイプのシェアが古参のマネジメント層以上と若手年代で大きく異なっていることが明確になりました。
要因は様々考えられるものの、それぞれの階層での「採用プロセス」に大きな変化があったことが分かりました。
まだ、会社の規模が小さな時代、つまり現在のマネジメント層が入社した時代は採用数も少なく、当時の社長・役員陣が自ら「口説いて」「動機付け」して採用していました。
なので、入社理由の多くが「●●さんの話に共感して」「●●さんと一緒に仕事すると成長できそうに感じて」といった理由になっていました。結果として、●●さんと近い情動パターンタイプの方のシェアが高くなっています。
しかし、企業規模が大きくなってきたタイミングで採用活動の主体が人事部に移り、ある種効率的に採用活動を展開した頃から、入社理由の中心が「●●さん」といった「人」ではなく、業界や職種に対するイメージに移っていったのです。
今、この会社は変革期を迎えています。
現在の事業を安定的に回していく上では、若手の階層に多い情動パターンタイプは活きるのですが、「変化」「新規事業」といった取り組みに関しては、マネジメント層に多い情動パターンタイプの人材が次世代の若手層にも一定数混じっていて欲しい、という人材ニーズが生じています。
そこで、「類は友を呼ぶ」を意図的に採用プロセスに組みこむことを検討し始めています。
つまり、採用プロセスの中に、「採用したい情動パターンタイプの応募者」と「それに近しい情動パターンタイプの活躍人材」を出会わせる仕掛けを組み込むのです。
昨今では、「内定辞退者をいかに減らすか?」も採用チームの課題となってきています。
ここに「類は友を呼ぶ」作戦を組み込むと以下のような活動になります。
内定者にPSAを受検して貰い、「情動パターン」を把握する。
現場の活躍人材(先輩社員)にPSAを受検して貰い、「情動パターン」を把握する。
①と②をマッチングさせ、情動パターンの近しい先輩社員が、内定者のメンターとして
定期的にメンタリング・動機付け活動を展開する。
人には「相性」があるということを私たちは「感覚的・体験的」に知っています。だから、「類は友を呼ぶ」ということわざが生まれたのだと思いますが、
それをある種科学的に活用できる時代が来ています。
ご興味のある方は、ぜひ我々にご相談ください!