2020年のコロナ問題への対処として、「人と人の接触を80%減らす」取り組みが求められました。
そして、各企業は急遽「原則在宅勤務」「オンラインを通じたリモートワーク」の実施に舵を切らざるを得なくなりました。
ひとマネに参加している経営者・マネージャーで情報共有をしていると、
各社一斉にオンラインを中心に仕事を回し始めたことで、企業・マネジメント・チーム・コミュニケーションなど様々な切り口で潜在化していた問題が浮き彫りになってきました。
そんな様々な問題の中で主に人事の現場から上がってくる危機感が、「新入社員の戦力化停滞リスク」や「早期離職リスク」への懸念。
2020年入社の新入社員も多くが自宅待機・在宅でのE-Learning・オンラインでの研修を余儀なくされていますが、例年だと当たり前にできている「新人同士の交流」や「職場のメンバーとの交流」が分断されていることで、「新人の孤立化」「職場・仕事への不安の増大」を懸念する声が多く聴かれます。
少子化による採用難の加速によって、いかに新人を職場に適応させ早期離職を防ぐか?は、コロナ以前からも重要問題となっていましたが、コロナを契機とした働き方の変容によってより一層意識的に取り組む必要性が高まっているのではないでしょうか?
今回から何回かで、この問題の構造と対処について考えてみたいと思います。
【そもそもなぜ今いる職場を離れるのか?】
誰でも時折「自分にとって、この職場・仕事を続けていることはいいことなんだろうか?」なんて考えることはあるのではないでしょうか?
そんな時、心・頭の中でグルグルするのはきっと「ペイン と ゲイン」の綱引き。
ペイン=苦痛や不安の度合い ゲイン=得られているもの・得られる可能性のあるもの
です。
その職場・仕事での「ペイン と ゲイン」のバランス。
そして、職を離れることによる「ペイン= と ゲイン」のバランス。
これらの綱引きは、人生のステージや社会環境によって刻々と変化していきます。
先日、あるワーケーション体験イベントに参加しました。イベントに帯同し、写真や映像を記録してくれていた男性と話をしてみると、なんと彼は24歳。フリーで主にYoutuberの動画制作・編集の仕事を請け負いつつ、カメラマンとしての実績作りにチャレンジしているところとのこと。よくよく聞くと、彼も大学を卒業する際は就活をし大手化粧品メーカーに一度は就職したそう。しかし、仕事を始めて1年ほどの間に様々思うところがあり、加えて趣味でやっていた動画編集の請負仕事でそれなりに食べていけそうだということで、思い切って会社を辞めたそうです。
現在の都会で一人暮らしをする20代の若者にとって、身の回りには「職場」ではなく「仕事」とマッチングする機会・方法も20年前と比べて随分と増えています。
さらに、「職場」に関しても有効求人倍率が示すとおり求職よりも求人が上回っており、優秀・自律的な人材ほど「職場を離れるペイン」は相対的に大きく下がっています。
今の職場で過ごす観点で「ペイン>ゲイン」 で、職場を離れる観点で「ペイン<ゲイン」なら、フリーランス化も含めて早いうちに転職しようというのは至極まっとうな行動だと言えます。
そして、社会環境として中長期的にこの流れはさらに進んでいくと診る向きの方が多いのではないでしょうか?
つまり、今の職場を離れる観点で「ペイン<ゲイン」が進んでいくのであれば、
採用時や受け入れ時に多額の投資をしている優秀な人材に自社で活躍・貢献し続けて貰おうと思えば、これまで以上に「職場のペインを低減させ」「職場でのゲインを増大させ」る活動を意図的・具体的・継続的に実施しなくてはならないということ。
現在48歳の私が仕事人生を歩み始めてからの20年ほどの時代の仕事観・職場観・キャリア観・人生観の当たり前と、いまの20代のみなさんのそれは随分違っていることを前提に手を打つ必要があります。一方で、人が「働く・仕事人生を過ごす」上で人間であるからこそ変わらないペインやゲインもあると思います。
ちなみに、私がかつて所属したリクルートは人材が辞めることで有名です。辞めることを「卒業」と呼んで推奨・支援することすら戦略的に行っている会社です。私の入社同期も私含めて多くが遅かれ早かれ「卒業」しました。私自身も入社時には「3年で辞める」イメージを持っていました。しかし、結果的には20年弱をリクルートで過ごしました。そこには
22歳の時点の私では想像できなかった「私にとってのゲイン」があったからです。
さらには、私自身のパーソナリティがそうさせた側面が強いことも今なら分かります。
つまり、人は「機会」に出会うことやその人自身のパーソナリティによって、その人にとっての「ペインもゲインも変わる」ということ。
次回はさらにこのあたりを掘り下げてみたいと思います!